結局ヴィーガンってなんなの?

ここ数年よく耳にする言葉「ヴィーガン(Vegan)」。野菜しか食べない人、というのはなんとなくわかるけどベジタリアンとの違いもよくわからないし詳しくは説明できないという方多いんじゃないでしょうか。ニュースやネットで頻出する割には実態がよくわからないという方に向けてヴィーガンとは何なのか紹介したいと思います。

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ヴィーガンに対してはいろんな意見がありネット上では賛否両論ありますが、ヴィーガンについて知ることで世界の様々な状況が見えてくるので今まだヴィーガンについて詳しくない方も是非この記事を読んでいただければと思います。

ちなみに筆者は全くヴィーガンではなく普通にお肉を食べます。

「ヴィーガン」と「ベジタリアン」

ヴィーガン
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ではまず「ヴィーガン」と「ベジタリアン」の違いについて紹介したいと思います。スマベジというウェブサイトに非常にわかりやすい表が掲載されていたのでこちらを使って説明していきます。

出典:スマベジ

この表を見ていただくとわかる通り、ヴィーガンとはベジタリアンの中の一種という位置づけとなっています。ベジタリアン(菜食主義者)という大枠があり、その中に何種類かタイプが存在するというイメージですね。ヴィーガンのほかにも、いくつか種類があるので紹介していきます。

ラクト・オボ・ベジタリアン

ラクトは乳製品、オボは卵という意味。このラクト・オボ・ベジタリアンが一般的に言われる「ベジタリアン」のことを指します。ラクト・オボ・ベジタリアンの方々が食べないのは牛豚鳥、そして魚。卵、乳製品、はちみつは摂取します。なぜ表にはちみつが入っているのかは後述します。

ラクト・ベジタリアン

ラクト・オボ・ベジタリアンから「オボ」がなくなっているので卵も食べないタイプのベジタリアンです。表にも記載がありますが、宗教上の理由でインドの方に多いベジタリアンのタイプ。シンガポールでよくベジタリアンと書かれたインド料理屋さんを見かけますよね。

ペスコ・ベジタリアン(ペスクタリアン)

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ペスコ・ベジタリアンは魚を食べるベジタリアンの方々のことを指します。イタリア語で「Pesce」が魚という意味でそこから来ています。シーフードがたくさん入ったパスタ、あれペスカトーレって言いますよね。お肉は避けるけど魚は食べれるので、ベジタリアン入門にはいいかもしれません。

ポーヨー・ベジタリアン

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スペイン語で「Pollo」が鶏、ニワトリという意味。つまり牛豚などは食べないが鶏肉は食べるよというベジタリアンのタイプ。こちらもベジタリアンの中では緩い方に分類されますね。セミベジタリアンと呼ばれることもあります。

ヴィーガン

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今回の記事のテーマの「ヴィーガン」。ヴィーガンとは日本語で言うと「完全菜食者」。つまり牛豚鳥といったお肉を食べないのはもちろんのこと魚、卵、乳製品、はちみつ、そして白砂糖も摂取しない方のことを指します。後ほど説明しますが、この「ヴィーガン」の方々の中でも数種類のタイプに分派しています。

ベジタリアンの方はお肉などを絶ち、野菜中心の食生活にすることによって自身の健康に繋げたいと考えている方が多いのに対し、ヴィーガンの方は人間の欲のため動物を殺生することに対して強い嫌悪感を持っている、つまり倫理的にお肉などを食べないという方が多いのが特徴です。

ベジタリアンとヴィーガンの起源

ベジタリアンというワードはなんとなく昔から聞く機会が多かったけどヴィーガンってここ数年で初めて聞いた気がするので比較的新しいワード?って思う方も多いと思います。ただ実はそうでもないんです。

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まずベジタリアンという言葉ですがしっかりと定義され始めたのは1847年に発足した英国ベジタリアン協会がきっかけ。なんと約170年前からある単語なんですね。当時のベジタリアンは、上の種類の中でも「ラクト・オボ・ベジタリアン」つまり卵と乳製品は食べていたようです。そこからさまざまなベジタリアンに分岐していったという感じです。

そしてヴィーガンという言葉が誕生したのは英国ヴィーガン協会が誕生した1944年のこと。今から約80年ほども前なのです。ここ数年よく聞くので最近作られたものかと思いきや、結構昔からある単語・思想なんですね。

ヴィーガンの種類

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ちなみにヴィーガンの中にもいくつかタイプが分かれていて、それぞれ思想が少し変わってきます。

ダイエタリーヴィーガン

ダイエタリーは「食事の」という意味。食事のスタイルはヴィーガンで完全菜食。ただ動物を使った製品(革製品や羽毛など)は使用するというスタイルのことを指します。食事のスタイルはヴィーガンだけど動物で作られた製品は使うよーってことですね。

エシカルヴィーガン

エシカルとは「倫理的」という意味。上のダイエタリーヴィーガンは動物製品を使用するのに対し、エシカルヴィーガンの方は動物製品も排除します。食べ物も動物が含まれているものは食べないし、動物が使われている製品も買いません!っていうのがこのエシカルヴィーガン。

ローヴィーガン

ロー(Raw)は「生の」を意味します。食べるものは上の2つのヴィーガンの方と同じですが、一つ違うのは口にする食べ物は基本的には48度以上で加熱することはないというところ。なぜ48度なのかというと、ビタミンや酵素などが壊れる温度が48度だから。つまりそれらを壊さず、野菜などに含まれている栄養素を無駄なく摂取できる調理方法で食事を取っているのです。

フルータリアン

果物やナッツ類などを中心に食する生活を送るのがフルータリアン。フルーツやナッツは実を取っても木は残りますよね。野菜とかだと根から引っこ抜いて食べたりするものがあるのでそれだと植物の命を奪ってしまいます。なのでその植物自体を生かしたまま果実や実の部分を食べようという考えです。もっと厳格なフルータリアンだと、木から自然に身が落ちたものしか食べないという方もいるみたいです。

ヴィーガンが食べないもの

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さきほどヴィーガンの方は牛豚鳥といった動物のお肉、また卵や乳製品も食さないとお伝えしました。ではなぜヴィーガンの方はこういったものを食べることを避けるのでしょうか。

肉類(牛豚鳥など)

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牛豚鳥を食さない理由。ご存じの方も多いかもしれませんが世界では過酷な飼育環境で育てられている食用の動物や家畜が多いのが現状です。狭いケージに入れられ、通常とは違うペースで食事を与え強いストレスを受けながら飼育しているところが少なくないのが現実で、映像などを見るとぞっとするものも多いです。ヴィーガンの方は倫理的にそれは間違っていることだと問題提議していて、そのような生き物を口にしないのです。

2019年には、世界の食文化の中心ニューヨークの全てのレストランにてフォアグラの提供が禁止になりました。フォアグラを作るためにはカモやガチョウの喉にチューブを入れて無理やり餌を流しこみ、肝臓を大きくする必要があるため動物虐待だと声が上がっていたためです。一部のフランス料理店からは反対の声もあったようですが、それを押し切ってでも世界三大珍味の一つの提供を禁止にするという決定は世界に衝撃を与えました。

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またこういった動物を育てるためのスペースを確保するため、毎年世界では大規模な森林が伐採されています。森が伐採されることによりもちろん緑は減るわけですから、大気中にあるCO2の抑制機能が下がってしまいます。温室効果ガスであるCO2が抑制できなくなるというまでもなく異常気象や地球温暖化が進んでいきます。さらに森林が減っただけならまだしも、そこで行う畜産業によりさらにCO2が増えるというものすごく地球に悪いサイクルが生まれてしまっているのです。

なんと世界の温室効果ガス排出量のうち約15%が畜産業から発生しています。またここ数十年で起こった南米の熱帯雨林地域の森林破壊の約40%が畜産業や、牛や豚に食べさせるための穀物を育てる場所を作ったためと言われています。ちなみにハンバーグを一個作るのに必要な水の量は約3000リットルともいわれていて、ヴィーガンの方はエコロジーの観点からも畜産物を避けています。

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魚を食べない理由ですがこれももちろん動物愛護、環境保護によるもの。魚、甲殻類には痛覚があり、痛み・ストレスを感じるというのが現在研究で分かっています。スイス、ノルウェーといった国ではロブスターといった甲殻類等を生きたまま調理するのを法律で禁止しているほどです。つまり魚の捕獲や乱獲、そして調理は動物愛護の観点に背く行為なのでヴィーガンの方は魚も食べません。

また環境保護の観点で言うと、魚の乱獲により海の生態系が破壊されてしまいます。海の環境を自然そのままにキープしておき、美しい自然を残しておくためには魚といった魚介類を食べないという選択肢を選ぶ必要があるのです。

ただ他にもはちみつや白砂糖も摂取しない方もいるのです。なぜでしょう。

はちみつ・白砂糖

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これも動物愛護から来ている考え。養蜂環境が本来の蜂の生活とは違う環境下となっていて、かつ非道なやり方で行われているところが多いと言われています。そもそもはちみつは蜂の食べ物。人間が奪うべきものではないのでヴィーガンの方はちみつもは食べません。

白砂糖を摂取しない理由ですが、実は白砂糖の生成には牛や豚の骨が使われているのです。初耳の方も多いかと思います。牛や豚の骨を焼いて炭にして、砂糖をろ過する過程でこの骨炭が使用されています。お肉が使われているわけではないですが、動物を使用している点でヴィーガンの方としては避けられているのです。

その他

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他にもヴィーガンの方が摂取しないものがあります。例えば動物性のサプリメントといったもの。通常のサプリメントには動物由来の成分が入っているものがあるのでそのようなものはヴィーガンの方は避けます。その代わり近年では動物性不使用のサプリメントが開発されているのでそういったものを摂取するようです。ただ薬に関しては今でも動物実験後に世に出ているものがほとんど。こちらも動物性不使用のものが今後出てこればヴィーガンの方も抵抗なく使えるのでいいですね。

お肉って食べなくていいの?

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小学生のころ給食のメニューには赤色、黄色、緑色の食品群に分けられ、それぞれに点数がふられていてバランスがいい給食のメニューですよーと書いてあったのを覚えてますか?そのうち赤色は「体の中で血や肉になる」と書いてあり、肉や魚、卵などが赤色に含まれていました。ということはヴィーガンになったらこの赤色がなくなるということなので食事のバランスがめちゃくちゃになってしまうじゃないか。。ってなりますよね。実際はどうなんでしょう。

人間に必要なたんぱく質

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なぜ赤色の食品群には肉などが含まれていて、「体の中で血や肉になる」と記載があるのかというとそれは肉などに含まれているタンパク質があらゆる体の部位を構成する成分だから。タンパク質には肉や魚に含まれる動物性たんぱく質と、大豆等に含まれる植物性たんぱく質が存在します。

体が成長段階にある子供から成人するくらいまでの年齢であれば、バランスよく動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を取った方が体の成長や体調維持に良いのですが、ある程度体の骨格なども固まってきて成長が緩やかになってきたら野菜から植物性たんぱく質やアミノ酸を摂取するだけで十分栄養が取れるとされています。実際にボディービルダーの方がヴィーガンだったり、陸上のカール・ルイス選手もヴィーガンだったりします。

ヴィーガンの方が口にすることができる食材の中で最もタンパク質が含まれているものは大豆。実はタンパク質量だけで言うと、同じ100gだとサーロインステーキよりも大豆の方が含有量が多いのです。

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他にもかぼちゃの種、チアシード、ピーナッツなどにも多くのタンパク質が含まれています。健康的にタンパク質を摂取するためには様々な種類の野菜やナッツなどを取っていった方がよいのは間違いありません。

次回はシンガポールのヴィーガン事情について

ではシンガポールでのヴィーガン事情はどうなっているのか、次回の記事で紹介していきたいと思います。スーパーなどでどんなものが売っているのか、どういったヴィーガンレストランがあるのかなど探っていきたいと思います。次回の記事も是非ご覧下さい!

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